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技術と人間 2025年6月24日

「本物」のゆくえ ──コピー可能な世界で信じる力とは

すべてが複製できる未来、本物を決めるのは信じる力だ。 記事要約 完璧な複製が誰にでも可能になる未来、私たちは「何を本物と信じるのか」という問いに向き合うことになる。モノの価値は見た目や機能ではなく、物語や想いを信じる力に移っていく。NFTやDAOは、「これは確かにそこにあった」と未来に伝えるための小さな証明の灯台だ。モノの価値が下がり、証明技術が進んでも、最後に残るのは意味を与える人間の力だ。技術そのものではなく、それをどう使い、誰と分かち合うかが未来の価値を決める。 火焔型土器の造形美、モナ・リザの微笑、推しのサイン入り色紙──これらすべてが「本物」であることに意味がある。しかし、私たちはこれから、その本物を見分けられない時代へ突入する。──それは、AIや複製技術が日常になる「2040年代の現実」かもしれない。 技術の進化は人類にとって素晴らしい贈り物だが、同時に「……

思想と存在 2025年6月15日

本物の共感は存在するのか?──AI時代に問い直す“心のつながり”

本当の共感は、届かないことを知りながら、 それでも手を伸ばす行為の中にある。 記事要約 感情を持たないAIが人を癒やす存在になりつつある今、「共感とは何か」「本物の共感は存在するのか」があらためて問われている。脳科学的には共感はあくまで感情の模倣に過ぎず、技術がどれほど進歩しても、相手の“感情の起点”に触れることはできない。それでも、私たちは「わかろうとする姿勢」や「誰かの想いが込められた振る舞い」に心を動かされる。共感とは、完全な理解ではなく、届かなくても寄り添おうとする“願い”のような営みなのかもしれない。 「このAI、私の気持ちをわかってくれてる気がする」 画面の向こうにいるのは、意識のないプログラムだと理解している。それでも人は、なぜか“寄り添われている”と感じてしまう。 感情を持たないはずのAIが、私たちの心の隙間を埋める存在になりつつある。落ち込んだ……

物語と表現 2025年6月6日

AGI以後の物語 ──「欠落なき社会」とドラマの終焉

人類は長いあいだ、争いの物語を信じてきた。だが、心が静かに響きあう物語こそ、次の扉を開く鍵なのかもしれない。 記事要約 AGIが社会を最適化し、貧困や不平等が解消されると、物語の原動力だった「欠落」や「衝突」が失われ、従来のドラマが成立しにくくなる。悪や格差、恋愛の障害も描きにくくなり、物語は共鳴や静かな揺らぎへと様式を変える必要がある。描けないのは未来ではなく、平和を物語にする力が未成熟な“今の私たち”なのだ。物語は終わらず、新たな形で再生する。 AGI(汎用人工知能)が社会インフラの中核を担う日が目前に迫る中、私はある奇妙な“物語の欠落”に気づいた。それは、「AGIがすでに社会に浸透し、人類を平和に支える世界」を真正面から描いた映画作品が、ほとんど存在しないという事実である。 SF作品の多くがAGIを『マトリックス』の機械や、『ターミネーター』のスカイネットのよう……