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物語と表現 2025年6月6日

AGI以後の物語 ──「欠落なき社会」とドラマの終焉

人類は長いあいだ、争いの物語を信じてきた。だが、心が静かに響きあう物語こそ、次の扉を開く鍵なのかもしれない。 記事要約 AGIが社会を最適化し、貧困や不平等が解消されると、物語の原動力だった「欠落」や「衝突」が失われ、従来のドラマが成立しにくくなる。悪や格差、恋愛の障害も描きにくくなり、物語は共鳴や静かな揺らぎへと様式を変える必要がある。描けないのは未来ではなく、平和を物語にする力が未成熟な“今の私たち”なのだ。物語は終わらず、新たな形で再生する。 AGI(汎用人工知能)が社会インフラの中核を担う日が目前に迫る中、私はある奇妙な“物語の欠落”に気づいた。それは、「AGIがすでに社会に浸透し、人類を平和に支える世界」を真正面から描いた映画作品が、ほとんど存在しないという事実である。 SF作品の多くがAGIを『マトリックス』の機械や、『ターミネーター』のスカイネットのよう……