Naoto Kaitu author

AIやブロックチェーンといった技術の進化を、「人間の存在意義」や「社会のあり方」を見つめ直す契機として捉えています。 哲学、教育、芸術、感情など、人間的で本質的な領域を軸に、テクノロジーとの調和による希望ある未来像を模索しています。 複雑化し、分断が進む時代だからこそ、「人と社会のつながり」を再定義することが、人間本来の姿を取り戻す鍵になると信じています。

技術と人間 2025年6月24日

「本物」のゆくえ ──コピー可能な世界で信じる力とは

すべてが複製できる未来、本物を決めるのは信じる力だ。 記事要約 完璧な複製が誰にでも可能になる未来、私たちは「何を本物と信じるのか」という問いに向き合うことになる。モノの価値は見た目や機能ではなく、物語や想いを信じる力に移っていく。NFTやDAOは、「これは確かにそこにあった」と未来に伝えるための小さな証明の灯台だ。モノの価値が下がり、証明技術が進んでも、最後に残るのは意味を与える人間の力だ。技術そのものではなく、それをどう使い、誰と分かち合うかが未来の価値を決める。 火焔型土器の造形美、モナ・リザの微笑、推しのサイン入り色紙──これらすべてが「本物」であることに意味がある。しかし、私たちはこれから、その本物を見分けられない時代へ突入する。──それは、AIや複製技術が日常になる「2040年代の現実」かもしれない。 技術の進化は人類にとって素晴らしい贈り物だが、同時に「……

技術と人間 2025年6月16日

未来にお金は必要か?──DeFiとゼロ知識証明が変える“価値の正体”

AIが生産を代替する未来は、信頼が通貨になる未来。 記事要約 AIやロボットが生産の担い手となる未来、私たちは「富を誰が、どう分けるのか」という本質的な問いに直面する。お金の意味が変わる時代、価値の基準は資産や肩書きではなく、信頼や貢献にシフトしていくかもしれない。DeFi(分散型金融)やゼロ知識証明といった技術は、中央の権威に依存せずに“信頼”を記録・証明する手段として注目されている。お金の前に変わるべきもの。それは、価値を生み出す「人のあり方」なのだ。 「もうすぐ、お金のために働かなくていい未来が来る」 そんな言葉を聞けば、多くの人は思わず笑うことだろう。「理想論だ」「夢物語だね」と。けれど、気づけば私たちは、その入り口に立ち始めている。 AIは文章を生み、ロボットが建設をこなし、ドローンが農業を担う。かつて誰かの“仕事”だったことが、急速に自動化されつつあ……

思想と存在 2025年6月15日

本物の共感は存在するのか?──AI時代に問い直す“心のつながり”

本当の共感は、届かないことを知りながら、 それでも手を伸ばす行為の中にある。 記事要約 感情を持たないAIが人を癒やす存在になりつつある今、「共感とは何か」「本物の共感は存在するのか」があらためて問われている。脳科学的には共感はあくまで感情の模倣に過ぎず、技術がどれほど進歩しても、相手の“感情の起点”に触れることはできない。それでも、私たちは「わかろうとする姿勢」や「誰かの想いが込められた振る舞い」に心を動かされる。共感とは、完全な理解ではなく、届かなくても寄り添おうとする“願い”のような営みなのかもしれない。 「このAI、私の気持ちをわかってくれてる気がする」 画面の向こうにいるのは、意識のないプログラムだと理解している。それでも人は、なぜか“寄り添われている”と感じてしまう。 感情を持たないはずのAIが、私たちの心の隙間を埋める存在になりつつある。落ち込んだ……

思想と存在 2025年6月12日

感情を持たないAIは、敵ではない──生命の進化と知性の未来

AIが世界を理解するとき、世界に意味を与えるのは、私たちの感情だ。 記事要約 AIが人類を支配するという恐怖は、実際には人間自身の感情や無自覚な投影から生まれる誤解にすぎない。AIは痛みも快楽も経験せず、意志や感情を持たないため、本質的に“暴走”することはない。真に危険なのは、感情を持たないAIではなく、それを設計・命令する人間側の責任放棄である。AIと人間は上下関係ではなく、役割を分担する「共鳴する存在」として共生できる。感情を持つことこそが人間の価値であり、AIに“意味”を与えるのは私たちなのだ。 AIが感情を持って人類を支配する──そんな未来像が映画やニュースで語られることがある。しかし、それが現実になる可能性は極めて低いと私は考える。なぜなら、AIは“感情の起源”から切り離された存在だからだ。 感情とは何か。それは単なる気分ではなく、進化の過程で獲得された生存……

技術と人間 2025年6月10日

AGIとDAOがひらく意思決定の未来――「任せる社会」から「関わる社会」へ

AGIが課題を最適化し尽くしたその時、最後に残るのは、「私たちはどう生きたいのか」という問いである。 記事要約 AI(AGI)の進化によって、作ることの苦労から解放される未来では、「どう判断し、どう関わるか」が人間の役割となる。これまで専門家に“任せていた”社会から、個々が意思決定に“関わる”社会へ移行する必要がある。その鍵となるのがDAO(分散型自律組織)であり、ブロックチェーン技術を活用して透明で自律的な合意形成の実現だ。DAOとAGIの補完関係によって、合理性と共感を両立した民主主義の新たな形が生まれる可能性がある。 私たちはこれまで、政治は政治家に、教育は先生に、経済は企業に──と、社会のさまざまな役割を「任せる」ことで、社会の仕組みを円滑に保ってきた。これは、意思決定を特定の立場や専門家に集約することで、社会の秩序や効率を“保つ”という考え方に基づいていた。だが……

物語と表現 2025年6月6日

AGI以後の物語 ──「欠落なき社会」とドラマの終焉

人類は長いあいだ、争いの物語を信じてきた。だが、心が静かに響きあう物語こそ、次の扉を開く鍵なのかもしれない。 記事要約 AGIが社会を最適化し、貧困や不平等が解消されると、物語の原動力だった「欠落」や「衝突」が失われ、従来のドラマが成立しにくくなる。悪や格差、恋愛の障害も描きにくくなり、物語は共鳴や静かな揺らぎへと様式を変える必要がある。描けないのは未来ではなく、平和を物語にする力が未成熟な“今の私たち”なのだ。物語は終わらず、新たな形で再生する。 AGI(汎用人工知能)が社会インフラの中核を担う日が目前に迫る中、私はある奇妙な“物語の欠落”に気づいた。それは、「AGIがすでに社会に浸透し、人類を平和に支える世界」を真正面から描いた映画作品が、ほとんど存在しないという事実である。 SF作品の多くがAGIを『マトリックス』の機械や、『ターミネーター』のスカイネットのよう……